正式な薬膳でなくても、台湾の人は食や食と身体の関係にはうるさい。風邪をひいて病院へ行くと、オトナでも子供でも、必ず「〜は食べてはいけませんよ」と言われる。咳がひどい時はスイカがダメ。風邪の時はたくさん水を飲め、はもう1万回ほど聞いた。
医者でなくても、朝、起床後、空腹時にみかんは胃を痛めるよとか、マンゴーは一度にたくさん食べるとダメとか、便秘にはニラが効くとか、緑茶は身体を冷やすとか、羊肉は身体を温める効果があるので冬食べろとか、かなり細かくチェックされる。
台湾歴が長く、日本人からすれば許し難い彼らの無神経や不道徳を知る二胡母は「そんなこと気にするなら、もっと細やかにやるべきことがあるでしょう!」と何度思ったかわからない。〜は身体を冷やすから今はダメ、などとキビシイくせに、台湾の人は夜でもどっさり果物を摂る。
日本では果物は極力朝に、次は昼、夜は好ましくないと教えられた。身体を冷やすからだ。私がそう発言しても絶対聞き入れない。
また、台湾の人は非常に日本びいきで、日本は清潔で美しく、日本人は礼儀正しい、日本に旅行するの大好き、と言うものの、日本食はあまりほめられたことがない。
まず、量が少ない、と言う。小皿にちょこちょこっと入っていて、なかなか満腹にならず、満腹になるまで食べると高くついてたまらない。
夫リーも指摘するのは、あっさりし過ぎていて物足りない、だ。日本人が中華料理は油っこいと言うのと同じ感じだ。刺身、いわゆる生の海産物を嫌がる人も多い。好きな人は好きだし、数切れならOKという人も多いが、日本人のように握り寿司や刺身に対する愛着は薄い。
小さいことのようで、食や味覚の違いはかなり障害になりやすいものである。何を隠そう、リーとぶつかる原因は味覚の違いや好み、習慣から来るものが多かった気がする。私の両親が長く台湾に滞在したがらないのも、食べ物が口に合わない点にある。
沖縄から約850km、近いアジアの隣国台湾でも、日本とこんなにも異なる世界と文化が息づいている。